踊組 5 全国高総文祭優秀校東京公演
全国高等学校総合文化祭の結果、郷土芸能・日本音楽・演劇の三部門は、
優秀校東京公演(国立劇場)に出場できる。今年の国立劇場公演には、岩手県からは
盛岡第二高等学校の箏曲部(日本音楽部門文化庁長官賞)と、
田野畑高校踊組が参加することになった。というわけで、特訓と日記は続く。
- 8月21日(月)ちょっと雨
- 夏休みも終わって、久しぶりの練習。
IBCの方も取材に見えて
カメラを回していた。あと二日練習をしたら、こんどは東京へ出発だ。
本当は、休み明けすぐに新執行部による生徒総会が予定されていたけど、
これで無期延期になってしまった。
- 8月24日(木)晴れ
- バスで、あっという間に東京に着いた。国立劇場へは明日行く。どんな所かなあ。
東京は相変わらず暑い。
- 8月25日(金)晴れ
- 国立劇場でのリハーサル。デカかった。あんなに大きな舞台だとは思わなかった。
舞台中央とか、掛け合わせの場所がよく分からなくて苦労した。ライトで照らされると
目印も見えなくなった。なんか、いつも不安で申し訳ない。
- 8月26日(土)晴れ
- 国立第一日。でも、入場制限もあるので、わたしたちは東京観光をした。
しかし、どこにいても頭の中には明日のことがあって、
いつも踊っている感じだった。
- 8月27日(日)晴れ
- 9:30、国立劇場に着き、10:30頃から大稽古場で練習をした。
テレビ岩手や
IBC、それに田野畑高校の放送委員会も取材にやってきた。しかし、最初に踊る
まことくんのリズムが合わなかったり、まさるくんのノドの調子が悪かったり、
たくみさんの足のケガで医者を呼んだりと、トラブル続出。
しかし、昼食時に村長さんが激励にいらして、だんだん調子も出てきた。
15:25、いよいよ本番だ。やはりとても緊張したけど、
落ち着いた本来の踊りができたような気がする。身体が自動的に前に出て、
勝手に手足が動いた。緞帳が降り、会場からものすごい拍手があった。終わったぁー。
三年生の先輩は泣いていた。去年から、いや三年生にとっては入学以来、
頑張ってきた菅窪鹿踊・剣舞がこんなになるなんて、夢みたいだ。
国立劇場で踊ったことは絶対忘れない。この感動は、私の一生の宝物である。
東京公演プログラムより
- 学校紹介
- 陸中海岸国立公園の北部、北山崎や鵜の巣断崖の
景観で知られる岩手県田野畑村に、わたしたちの高校はあります。
人口5,000人の村にある、各学年1クラス、全校生徒94名の小さな学校ですが、
松茸・ウニ・アワビを毎日食べ、地元の方々の声援を受けながら、
充実した高校生活を送っています。
今年の全国高等学校総合文化祭 (新潟大会) には、郷土芸能部門と放送部門に
参加し、二つの部門とも最高賞に当たる評価をいただき、二つの日本一に輝きました
(三年後の創立50周年には世界一? )。
- クラブ活動
- 小さな高校で、他の学校と同じような活動方法では、
なかなか成果があがらないため、田野畑高校では、文化活動のほとんどを
委員会活動として行っています。郷土芸能については「踊組」という委員会を
二年前につくり、従来から行っていた菅窪鹿踊・剣舞の伝承活動を活発化させ、
地元保存会の指導のもと、国立劇場での東京公演を目指して練習を重ねてきました。
これから舞台に登場する28名の中には、野球部のエースも、
バレーボール部のキャプテンも、放送委員会のミスターDJもいます
(生徒会執行部もほとんど全員いるので、生徒総会が開けなくなってしまいましたが)。
「田野畑高校を有名にする」という生徒会活動目標のもと、
三年間で数人分の高校生活を送っているわたしたちが、
本日は郷土芸能に青春をかけます。
どうぞ、最後までよろしくお願いいたします。
終演後のインタビューより
- ずっと踊っていて、すごく疲れたのではありませんか?
- 「かなり疲れました」
- このカシラは重いんですか?
- 「かなり重いです」
- 一日何回くらい練習しているのですか?
- 「一日一回ですけど」
- この活動は委員会として行っているそうですが、
運動部には何か入っているんですか?
- 「野球部です」
- もしかしてプログラムにあったエースというのはあなたですか?
- 「いえ、セカンドです」
- 部活と踊りの練習はどうやってるんですか?
- 「午後6時まで、野球の練習をして、そのあと
2・3時間踊ります」
- はあ、ハードなんですね。地元の応援の方もたくさんいらしている
とのことですが、応援の方々に何かありますか?
- 「ここまで来られたのも皆さんのおかげです。
こんなに素晴らしい舞台で踊ることができました。ありがとうございます」
- 踊りのバックの曲が、ずっと同じ調子に聞こえるんですけど、
きっかけはどうやってあわせているんですか?
- 「鹿の方は、口上の変化で、剣舞は
太鼓のたたき方で変わっていきます」
- 最後に、国立劇場で演じてみての感想をお願いします。
- 「ここに来られたことは最高ですし、
本当にうれしいです」
「予想以上に大きな舞台で緊張しましたが、終わって安心しました」
「国立劇場で踊ることが、わたしたちの目標だったので、
とてもうれしいです」
国立劇場でのアンケートから
- 日本音楽・郷土芸能という、
ふだん触れる機会の少ないものに触れられて、とても感銘を受けました。
- 田野畑高校の菅窪鹿踊・剣舞は、全校生徒、そして
田野畑村のみなさんの心が伝わってきました。訪ねてみたくなりました。
- 私は埼玉県秩父の者ですが、わがふるさとから岩手田野畑に伝わった舞ということを知り、感動も新たです。
- 高校生の力のすごさを知り、18歳の夏、今日ここに来てよかった。
おわりに
最後に、埼玉県の聖望学園高等学校のことを紹介する。
9月の県大会の翌日 (9月24日)、放送顧問の菊地先生が学校に着くと、
親子連れのような二人がいた。話を聞くと、新潟の放送部門大会で
田野畑高校の番組をみた聖望学園高等学校の宮崎守彦先生と、
一年の春日玲さんだという。田野畑高校放送委員会のビデオレターで
菅窪鹿踊・剣舞を見たくなり、国立劇場に行って感激し、今度は
踊組のファンになって、まさるくんと話したくて徹夜でやって来たのだそうだ。
きっと上のアンケートに答えてくれた人だ。早速まさるくんを電話で呼び出し、
たっぷり交流して帰っていった。県大会での踊組を見たかったというので、
田高祭での発表日程をお知らせしたら、またまた11月の文化祭にやってきた。
全国大会に行って、一番うれしいのはこういうときです。