陸奥日記    

初めに

  増補行程記にのっとり、一里塚を調べているうちに、最近、「陸奥日記」というものに出くわしてきた。その最初は花巻の関係文書を漁っているうちに、「花巻市上町の歴史」という本がある、と、弟から知らされた。それを見たが、その中に「陸奥日記」からの引用として、確かに花巻の一里塚について多少詳しく書いていた。その上町の歴史は高校時代に日本史を教わった先生が書いていた本だ。しかし、「陸奥日記」そのものについての解説が詳しく無く、自分としては、自信が持てなかったので、そのままにしていた。その後、平成16年、岩手県立博物館で「描かれた北東北」という特別企画展(16・9・22から10・11まで)が開かれたので見に行った。その中で「陸奥日記」が、同博物館所蔵として、紹介されていた。もしやと思い、担当の学芸員T氏に聞いてみたが、快くコピーを提供してくれた。さっそく、ざっと読んでみた、が、驚いた。小生のこのページにぴったりの紀行文だ。文政元年に江戸から松前まで、3月から6月にかけての淡々とした紀行文だ。学芸員に聞いたが、今はこの本に関し活字での出版は聞いたことが無いという。作者もはっきりしないと言う。
 古文書の知識も不十分だが夢中になって読んで、その後、なんとかしてこの作品を多くの人に知ってもらいたいという感が強くなってきた。そういうことで、ここに紹介することにした。

(平成22年8月14日 追加)
 岩手県立博物館から陸奥日記のコピーをいただいたときに、挿絵と思われるものが、かなり添付されていた。後日、ある人に
見てもらおうとおもってお渡ししてそのままになっていたが、その方が亡くなり、今まで、放置していた。
 ところが、最近ネットで菊池勇夫氏の「模地数里」に描かれた松前 −長春丸・女商人・馬ー という論文を拝見した。その論文によると、「模地数里」に描かれた絵が、岩手県立博物館から、陸奥日記のコピーを頂いたときに含まれていた挿絵に相当するように思えたので、「模地数里」を所蔵する国立公文書館に問合せ、取り敢えず江戸から青森間までを所収すると思われる「模地数里」上
をデジタルカメラ撮影依頼した。昨日(平成22年8月13日)それが届いたので、早速拝見した。記憶が定かではないが、少なくとも数枚は岩手県立博物館所蔵「陸奥日記」の挿絵に似ている。近い内に再度県立博物館でチェックするつもりであるが、時間が前後するが、手元にあるデジタル画像を、適宜、陸奥日記の文中に挿入した。解読文を読む方に少しでも興を高めてもらいたいというしゅしである。この件については菊池勇夫教授の論文に多大にお世話になりました。その論文は下のアドレスからアクセス出来ます。


 http://www.himoji.jp/jp/publication/pdf/nenpo/No03/078-096.pdf

註: 菊池論文 は「神奈川大学 人類文化研究のための非文字資料の体系化3 2006年3月発行」に所収されているようです。

                       (以上 22年8月14日 追加)


 先にも行言ったように作者が不詳らしいが、それではなんとなく落ち着かないので、取り敢えず、自分なりに、作者を推測した。結論は「亀田鵬斎」が、作者でないかということになった。

その理由は

1 この文の、序文を書いたり、作者を千住まで送った人は「日尾荊山」と思われるが、彼は亀田鵬斎の弟子であったということ。

  日尾荊山については吉川弘文堂の「日本随筆大成 新装版」第1期15に彼の「燕居雑話」が所収されており、解題に解説がある。一部を引用すると、本姓は魚澄氏で医家林庵の子、名は政寛、璞、瑜。字は得衆、葆光、徳光。通称多門、宗右衛門。号は恭斎、荊山、 至誠堂、善司、直麿、呉竹堂主人等と称した。とある。亀田鵬斎の高弟で、国学も清水浜臣門下とある。安政6年8月12日没。享年71歳、谷中の本通寺に葬られた。

2 この文は文政元年(1818年)に書かれたが、その時、鵬斎は元気で存命中であった。その少し前は新潟、長野に長旅をしていた。そこでの良寛との出会いが有名である。

3 ちなみに鵬斎は宝暦2年(1752年)江戸に生まれ、文政9年(1826年)に亡くなったらしい。
4 文中、芭蕉、大島蓼太、四方赤良、酒井抱一の名前がでてくるが、彼らを自在に引用できる人物であった。尤も、6月3日の項に、「鵬斎・蜀山人の賛」云々とあるが、それの解釈が難しい。

5 松前に勤務のため旅立ったかなりの地位の武士とほぼ同行し、旅行中も行き来しているので、それなりに武士達にも認められた人物であると推測できること。

6 序文で作者は「央斎」と表現されているが、「鵬斎」と非常に類似しているということ。

7 鵬斎は寛政異学の禁でマークされていたので本名(号)での著作はしにくかった環境にあったかもしれないこと。

8 作者は、旅の途中で、本を売りさばいてもいるようだが、それが何かのヒントになるか。

9 これらはあくまでも状況証拠なので、今後時間を見つけ、鵬斎自身の行動を追って結論を出したい。

 そういうことで、急遽、小生のホームページに「陸奥日記」の自分なりの読み下し文を添えることにした。恥ずかしながら自分は岩手古文書学会に20年ぐらい加入しているが、森のぶ先生には顔を合わせられない劣等生で、年十回の講義の半分も出ない年のほうが多い。従って読みの正確性は保証のかぎりでないが、「陸奥日記」が市販されていないという条件を少しでも緩和するために、敢えて公表しすることにした。

 なお、自分が鵬斎を知ったのは、まったくの最近なので、知識の蓄積も無く、既に周知の事実を、私だけが知らないということも有るかもしれないが、それはそのときとして、である。

 17年1月「亀田鵬斎と江戸化政期の文人達」を著した渥美国泰氏に、氏が館長を務める「江戸民間書画美術館」で直接お会いする機会があり、伺ってみたが、「陸奥日記」は、初めて聞くので、今後の課題とのことだった。

陸奥日記目次


1  陸奥日記序・・・・・・・・・・・・・・・・・     ここをクリック願います
2  陸奥日記巻之一の1(千住から小山まで)ここをクリック願います。
3  陸奥日記巻之一の2(小山から白河まで) ここをクリック願います。
4  陸奥日記巻之一の3(白河から越河まで)ここをクリック願います。
5  陸奥日記巻之一の4(越河から金成まで)ここをクリック願います。
6  陸奥日記巻之一の5(金成から九戸まで)ここをクリック願います。
7  陸奥日記巻之一の6(九戸から乗船まで)ここをクリック願います。
8  陸奥日記巻之一の7(乗船から松前まで)ここをクリック願います。
9  陸奥日記巻之二の1(松前から乗船まで)ここをクリック願います。
10 陸奥日記巻之二の2(乗船から一戸まで)ここをクリック願います
11 陸奥日記巻之二の3(一戸から水沢まで)ここをクリック願います
12 陸奥日記巻之二の4(水沢から越河まで)ここをクリック願います
13 陸奥日記巻之二の5(越河から白河まで)ここをクリック願います
14 陸奥日記巻之二の6(白河から間々田まで)ここをクリック願います
15 陸奥日記巻之二の7(間々田から千住まで)ここをクリック願います

 


1 陸奥日記序

謝在杭有言曰 読未曾見之書 歴未曾到之山水 如

穫至宝賞異味 一段奇快 難以語人也 可沼至其条

望嶽丈央斎翁性嗜探幽境歌蹤旦以有陵素之

村前径歴必図所視聴必記是以能使人観所末視之

山水聞所末聞之好話焉今茲翁有遊奥州松島之

弁巌悉具三月念七己上道望午自制空帋薄

秩二冊以儘之云給日程図記之用翁輙起筆於

千住駅至奥州松前而止題曰陸奥日記夙好学

断斎書弼至今幾三十年徒不為一婁落魄千

陋巷唯衣食是議未皇安東山之遊亦実

 

支遁山之資哉講経伝玩詩賦己無其功績云己

無風顔碌々日難於風塵之中者唯是精衛鑑銜石

鵙鷯巣枝車尽以此翁之風韻比吾輩等之無為別宵

壌矣望不能無感?此乃段翁之所図記之日程爰一

園之所徳歴之地勝所視聴之風物図之記之或

以詩歌或話山川険丈駅程遠遍人物情

態方言好醜無物不具戴也於是乎観所末観之

山水聞所未聞之好話実如彼穫玉宝賞味可

謂一段歌悦也因以為序

 

文政改元六月中澣 魚澄子璞  撰

 

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 6 増補行程記(リスト1の4)栃木県内
 7 増補行程記(リスト1の5)福島県内
 8 増補行程記(リスト1の6)宮城県内
 9 増補行程記(リスト1の7)岩手県内
10 増補行程記(リスト2

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