4 ランボーと賢治について3回宮沢賢治国際研究大会に出席して)

初日825日最初の記念講演はイヴ=マリー・アリューというフランス人の講演で「二人の太陽の子・宮澤賢治とアルチュール・ランボー」という題であった。名前だけは聞いたことがあるランボーを取り上げての話なのでかなり戸惑った。やはり話を聴き終わっても何がなんだか解らなかった。それでは話にならないので、遅ればせながら市の図書館で本を借りランボーの作品(筑摩書房世界文学大系 昭和37228日発行 秋山晴夫、鈴木信太郎、小林秀雄訳)を読んだ。演者は渋沢孝輔の論文を参考にしたというので、イーハトーブ記念館で探したが、仏訳のコピーしかなく、残念ながらそれは参考に出来なかった。(後日「宮澤賢治研究ANNUAL」に所収されているコピーをイーハトーブ館から戴いた。しかし、申し訳ありませんが、ここでは、その稿は充分に反映されてはいません。)

 題名の「二人の太陽の子」は、まあうなずけるが、中身の比較はあまり意味がないような気がする。確かに二人とも37歳で亡くなったらしい。更に二人とも天才だ。語彙も豊富だし修辞の才が抜群だ、国内では群を抜いている。しかし、生き方が極端に違う。

 賢治は修羅の身を嘆き、それでも、なにか役目を果たしたいと愚直なまでに求めた。

一方ランボーは己の天才であることを誰よりもよく知り、あえて隠さず、ベルレーヌにたいしてすら相対的に凡庸な者に対する振る舞いにも似た処し方をする。(大系 文学書簡十九 343頁)ランボーは「のような」という単語を必要としない(大系 アルチュール・ランボー著作集の序 372ページ 下段)から、自分の社会における位置を気にすることは勿論なく、己の表現はそのまま最高の真実にすぎない。己の光よりも早い思考の洪水の中で、表現するまだるっこさに絶望し、更に又遅いフランスの知的世界の動きにあきれ果てた彼と、賢治では明らかに比較しようがない。

また別な見方をすれば、修辞学の奥義を窮めたランボーは、この世の総てが彼の修辞学の知識でどのようにでも彼の意のままに成ると考え、先ず文学を制した。たしかにそのように成ったことから、次に別な世界に修辞学を武器として勇敢にも立ち向かった。

そのような、ランボーに対し、賢治は中学時代に短歌制作という作業を通じた或る意味の修辞学的修練を済ませ、その次は文語詩というステップで又一種の修辞的センスを養った。最後は自然科学のボキャブラリーで一連の修辞技術を完成させた。それと天性の音楽的感覚を文章に内在させることが出来る能力との両方のスクリーンを濾して生涯にわたる文章表現の道を歩み続けた。しかし賢治はその稀有な才能を、ランボーのように総てを金に換える魔力を持つ杖などと、思い込みをせず、修羅の立場でひそやかに発現し歩み続けた。

その差はいかにも大きい。

結論というわけでもないが、むしろ、今回は二人の文学作品の比較研究というより、文章表現技術もしくは修辞学的技術が以外に等閑視されていることに対する見直しの一つのヒントとしてイヴ=マリー・アリュー氏の発表があったととらえたい。

 

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