3 ヒデリかヒドリかについて

賢治学会員になって6年目ですが、この九月初めて総会及び翌日の研究発表会に出席してみました。二日目の発表会ではB会場の方を選びました。たまたま、そちらの2つ目の発表が「ヒデリ」に関する発表でした。自分としてはその件は、学会のホームページもあるので、済んだ話かと思っていましたが。演者はテキストクリテークという題名で口演されました。演者の結論は「ヒドリ」が正しいということのようでした。しかし、残念ながら時間が無いせいだろうと思いますが、「ヒドリ」を踏まえた原詩の解釈までには至りませんでした。後で考えると、演題に(その1)と付いているので(その2)の時に発表されるのかもしれません。

 そこで、おこがましいかもしれませんが、自分なりに演者の説を敷衍して解釈してみました。以下字数の関係で必要最小箇所だけに限定します。 

   

「ヒドリノトキハナミダヲナガシ」

「ヒドリ」とは、「日雇いかせぎ」だか

ら、(宮沢賢治イーハトーブセンター・ホームページ「ヒドリーヒデリ問題」につい

て 入沢康夫 の「引用」による)ヒドリをしなければならないときは涙を流すということになると思われます。では、その涙を流す期間はどのような期間になるのでしょうか。多分、その人がヒドリをしなくても済む様になる期間、すなわち自分の責任で営農(自作、小作両方含めて)出来る地位に到達するまでの長い間ということでしょう。

見方を変えれば、ヒドリ身分のときはいつも涙をながしていたという述懐にも似た文とも解釈できます。

「サムサノナツハオロオロアルキ」

突然農民の境遇の話しから、寒い夏の話に話題が変わります。おろおろ歩くのは多分詩の主人公なのでしょう。冷害の夏、ここは修羅の身ながら全農民にやさしい眼差しを注ぐ主人公の行動を言ったものだろうと思われます。

前の行のヒドリ農民の境遇の叙述とはいかにもかけ離れています。

私は花巻生まれですが農業は全く知りません。しかし、今のような解釈はどうもピント来ません。文理解釈上無理なような気がします。

ヒデリが続き干害になりそうなとき、

寒さが続き冷害になりそうなとき、そのどちらの場合にも思い悩み、かといって有効な行動を取ることが出来ない「主人公」・・・のほうが素直に受け入れられますが。

 

補足

「ひでり」についてあまり深入りする気は無いが、偶々高校時代の友人と話す機会があったとき、彼の話が、斬新に思えたので紹介させていただく。なお、彼のコメントに関する浜垣氏のコメントも合わせて下に添えた。
下記のブログからのコピーです。
http://www.ihatov.cc/blog/archives/2010/06/post_709.htm

彼はクマと云ってますが、気は優しくて力持ちです。

「ヒドリ」
この詩にこんな論争が有るとは、知りませんでした。
NHK
カルチャーアワー文学探訪・栗原敦・では「ヒデリ」でした。上流に豊沢ダムが出来るまで根本的な解決は望めなかった、と記しています。
「部落民一同、一丸となってこれに反対しましたが、小部落の力量ではどうすることも出来ませんでした。
永年住み馴れた墳墓の地に限りない愛着を感じながら、昭和27年4月、豊沢ダム建設に伴う移転補償契約に正式に調印を行いました。これを機に、部落民はそれぞれ新天地を求めて各地に移転しました。  
あれから30年経過しました。
生れ育ち、住み馴れた地を去る時のあの骨肉をひきさかれるようなつらい思いや、・・・」 移転30周年記念の豊沢会会長の文(一部分)です。
「ヒデリ」であって欲しいと思います。

投稿者 クマ : 20108 2 17:06

 クマ様、尊いコメントをありがとうございます。

 5年前の、栗原敦さんのNHKカルチャーアワーでは、私も勉強させていただきました。久しぶりにテキストを取り出して眺めてみましたが、やはり素晴らしい内容でした。

 そして次には、上に引用していただいた「豊沢会」の会長様の文章を、切実な気持ちで読ませていただきました。

 いま、花巻の平野に広がる田畑が、賢治の時代のような「ヒデリ」の被害から守られて、毎年豊かな稔りを生むようになっている背景には、このような現実があったのですね。
 私も豊沢ダムには行ったことがありましたが、その時、青い湖面の底に沈んでいる部落のことまでは、思いが至りませんでした。

 豊沢部落の方々の「骨肉をひきさかれるようなつらい思い」のおかげで、下流の稗貫平野の沢山の人々は、その昔には賢治さえ「ナミダヲナガシ」ているほかにどうしようもなかった「ヒデリ」の被害から、救われたわけですね。

 この箇所は、「ヒデリノトキハナミダヲナガシ」であると、私も信じています。

投稿者 hamagaki : 20108 3 01:21

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