踊組 3 踊組日記 (二年 さちえ)
1995年度、田野畑高校踊組は、
8月7日に新潟県佐渡の佐和田町で行われた
全国高等学校総合文化祭郷土芸能部門に、岩泉高等学校とともに
岩手県代表として参加した。
この部門は、8月末に東京の国立劇場で開催される
優秀校東京公演を目指して、コンクール形式で行われる。これまで岩手県の代表は、
ほとんど毎回この優秀校に選ばれてきた。わたしたちも国立劇場を目指し、
連日の特訓を行った。この日記は、夏休み (=全国大会) 直前の7月24日から、
「国立劇場の夏」、8月27日までの練習日誌だ。
- 7月24日(月)晴れ
- 今日、初めてカシラや衣装を着けて踊った。刀にも飾りが付いて
いよいよ本格的になった。ただ、まだみんな遠慮をして踊っている感じで、
一つ一つの動作に張りがないようだ。本番まで練習はあと十日間くらいしかない。
一日二回踊ったとしても、20回くらいしかできない。さらに真剣に、
一つ一つの動作を確認しながら踊りたい。明日は
テレビ岩手が来る。
- 7月25日(火)晴れ
- 今日はお客さんがたくさん来た。6時間目の練習の時には、
去年の県大会の審査員だった中村先生がいらして、
りゅうやくんやたいちくんの顔の振り方や足さばきを
ほめていただいた。私にも「去年の発表で一番審査員の間で言われたのが、
あなたの足の上げ方。すごく高く上がっていて良かった」と言って下さった。
19時からの練習では、保存会の人たちや
まさきくん (昨年の生徒会長。今は役場に勤めている) も来て細かいところを教えてくれた。で、
テレビ岩手の加藤アナウンサーが来て、
私もインタビューされてしまった。
キンチョーして何をしゃべっているのかよく分からなかったけど、
明日夕方のニュースで流れるそうだ。村の広報の佐々木さんもやってきて、
写真を撮っていった。そういうわけで、暑くてたまらないのだけど、
誰もダラけたりせず、気合一発! って感じだった。
- 7月26日(水)晴れ
- テレビ岩手の
ニュースの感想 父: 去年に比べて鹿がパッとしない。
暑いからか? 母: さちえもりゅうやくんのように大きく表現すると見やすい。
伯父: 田野畑高校はすげえな。でも去年と比べっとパッとしねえぞ。
- 7月30日(日)
- 今日は平井賀の祭りで、今年初めての発表を行った。港の特設ステージで、
暑い中だったので、いつもと全然違う感じがした。周りは全部お客様。
頭の中でいろんなことを考えたけど全然覚えていない。
あっという間に終わってしまった。もう少し丁寧に踊れば良かった…。
明日はもっとしっかりと踊らなきゃ。
- 7月31日(月)
- 全国大会出発式。体育館にはたくさんの村民の人たちで一杯だった。
昨日にもまして大きな拍手をいただいた。しかし…
鹿踊の途中、鹿の一人が衣装の乱れで舞台裏に来た。自分も心配になって
衣装を確認した。とその時、今度は別の鹿の角が取れた。保存会の佐々木さんは
その場で頭を抱えてしまった。踊りは進んで剣舞が始まる。
かつきくんとたつひこくんはうまく踊れていた。
そして私の番。踊っているうちに腰の帯が長くなっていることに気付き、
よく見るとほどけているではないか。「ヤバい! でもここでやめたらダメだ。
何とかしなきゃ」。一つ踊り終わって裏に戻り、佐々木さんのところに走っていった。
泣きたい気持ちで「私もやっちゃった」。
「大丈夫、こんなの失敗でもないから」とたいち君のお母さん。でも…。
こうして今、日記を書いていても、さっきのことを思い出す。
すごく手が震えてくる。
- 8月2日(水)雨のち曇り
- あれ以来、みんなの動きが変になってきている。
剣舞のタイミングが合わなかったり、互いの足を踏んでしまったり。鹿踊も
飛びが甘かったり、リズムが合わなかったり。心臓がドキドキいっている。
佐渡で踊っている自分をイメージするけど、途中で失敗している自分も出てくる。
すごく不安で落ち着かない。
- 8月4日(金)雨
- 田野畑での最後の練習を終え、17時、全校生徒を乗せたバスは、出発した。