- 平成8年度
- インターネットの Web ページを開設。
- Windows95 の稼働する生徒用コンピュータは1台もなく、スタンドアロンの
PC98 が約26台あるだけであった。
- 平成9年度
- 生徒用コンピュータを更新、10base-T による42台のネットワークを設備。
- 生徒用ネットワーク (情報処理教室) は、Windows95 のピアトゥピア接続。
- 生徒用コンピュータは、1台を各学年1名が使用。
- 使用するコンピュータを年度当初 (入学当初) に決めて個別のユーザー設定を行い
(1台を最大3名で使用する)、各自の作成したファイルは、自分のコンピュータに
個別に設定したフォルダに保存。
- 以上の設定等については、
校内ページ
参照。
- 職員用1台をサーバー (代わり) とし、ここに読み取り専用フォルダを一つ
(「お知らせ」フォルダ)、フルアクセスフォルダを一つ (「提出物」フォルダ) おき、
教材ファイルの提示と生徒作成ファイルの提出に使用。
- イントラネットの構築 … サーバーに読み取り専用フォルダとして \tanohata を
設定、公開 Web ページと同じファイルをここに置き、さらに下位に \kounai
フォルダを設定して非公開ファイル (校内用ページ) のスペースとした。
生徒用ネットワークの
ホームページ
(起動時表示画面) を \\server\tanohata\kounai\index.html に設定し、\kounai
以下に教材・コンピュータネットワークのマニュアル等を置いて
活用できるようにした。
- また生徒用ネットワークとは別に、私費で設備していた回線 (FAX用アナログ回線)
を利用して、職員室のコンピュータ1台をインターネットに接続できるようにした。
- 平成10年度
- 標記協力校に指定されたのに伴い、ISDN 一回線を生徒用ネットワーク
(情報処理教室) に設備、LAN を 100base-TX にし、ルータと接続ソフト
(Proxy2000) によって、ネットワーク上すべてから WWW を
利用できるようにした。
- また、サウンドボードを全台に、一部にメモリを増設。
- Web ページは平成8年度の開設以来
みちのくネット
(花巻) に置いているが、NTT の隣接区域外でもあるので、ダイアルアップ接続には
別のプロバイダ
(アクセスポイントは盛岡、平成11年3月末まではこねっとプランで無料) を利用。
- 今後はネットワークの安定的な運用のため、Windows NT 等の
ネットワーク OS を導入する予定。
以上は、平成11年1月27日にようやくネットワーク上すべてから WWW を
利用可能になった (100base-TX 化と Proxy2000 導入) ところであり、
本報告は、これらを十分に活用したものにはなっていないことを断っておく。
田野畑校は教員8名の小規模校であるので、特別な校内体制は設けなかった。
情報教育担当者を窓口として、全教員・全教科・全領域でのコンピュータおよび
ネットワークの活用実践を一応の目標とした。
本指定に伴う設備充実の計画は年度当初にたてたが、実際に予算措置が行われて
設備計画が実施できるのは年度末になることが予想されたので、
インターネットに接続できないことを前提に研究計画を考えた。
柱は次の三点である。
- LAN の活用 … ネットワークを活用した相互評価。
- イントラネットの活用 … WWW の技術を利用した LAN での教材提示、
校内ページの作成。
- WWW の活用 … WWW からの教材選択と利用、Web ページ (公開用) の作成。
- 教科・領域
- ねらい
- 自分の作品 (ファイル) を LAN 上に公開するとともに、他の生徒の作品を鑑賞し、
相互に評価しあうことを通して、自己を客観的にとらえる。
- 内容
- 1学年行事 (早池峰山登山) 後の感想文作成の例を示す。
- 秀丸
(テキストエディタ、シェアウェアだが生徒利用は無料) で各自が感想文を作成し、
ユニークな (他と重複しない) ファイル名で保存し、サーバー機の「提出物フォルダ」
(フルアクセスフォルダ。ショートカットアイコンを全台のデスクトップに置いている)
に送らせる。
- サーバーでは、「提出物フォルダ」から感想文ファイルを読みとり専用の
「お知らせフォルダ」(同じくショートカットアイコンを全デスクトップに置いている)
に移動し、生徒に開かせる。
- Microsoft Excel で「評価シート」を作成させる。各生徒の感想文を互いに評価し
点数と感想を入力して 「提出物フォルダ」に送らせる。
- 提出させた評価シートを編集し、評価全体を見られるようにする。
- 評価を参考に、最初の感想文を推敲する。
- 成果・課題
- クラス全員から自分の文章が評価されるので、
生徒の取り組みが極めて真剣であった。
- 普段の授業であまり発言しないような生徒もよく表現し、
さらに、これまでたとえば担任しか見ることが難しかったものを、ネットワークで
共有できるようになったので、教員の生徒理解をより深めることができた。
- 生徒相互の理解を深めること、自己を客観視することについては、
概ね期待通りの成果が得られた。
- 直接 HTML 形式にできれば、より簡単にファイルを共有できる。→
主なタグ等をあらかじめ入力した HTML ファイルを用意し、文化祭 (10月) 感想文では
これに直接入力させることで解決できた。
- 評価シートの編集に手間取る。
データベースソフト (MS Access など) の利用を考えたい。
- 教科・領域
- 理科 (生物 IB・総合理科合同で実施 担当: 関山雪枝・鶴嶋広喜)
- ねらい
- 内容 (授業展開)
- 野外観察 (2時間実施)
- レポート作成 (1時間)…観察した生物名を書籍等で検索、特徴と共に記入して
レポート提出。
- イントラネットを利用した観察の確認とテスト
- 野外観察時に撮影した写真 (20枚) をスキャナで取り込み、HTML
ファイル (seibutu.html
教材ページ) を作成する。
- このファイルを生徒用ネットワークのフォルダ (イントラネット) に置く。
- 本校の
ホームページ に
seibutu.html
(教材ページ) へのリンクを
設定しておき、生徒にアクセスさせ、復習をさせる。
- 教材ページとは写真の順番を変えた HTML ファイル
(seibutu2.html
テスト用ページ) を作成し、
同様にイントラネットに置いておく。
- 生徒が復習をしている間に、イントラネットから教材ページ seibutu.html を
削除し、seibutu2.html のファイル名を seibutu.html に変更する。
- 生徒にブラウザを「再読込」させると、テスト用ページが表示される。
これを使って定着度をはかるテストを行う。
- 成果・課題
- スキャナーでの取りこみと加工には多少時間がかかるが、
一度デジタル化してしまえば、他のデータ (考査問題等) としても
簡単に利用できる。
- 名称・解説などを付け加える、削除などが簡単である。
- 個人への鮮明画像の分配が容易である。写真・OHP・スライドより、鮮明かつ
安価で、一人一人個別のものを提示することができる。
また、自分で操作しながら、理解の速度に合わせて見ることができる。
- 教材ページは、全体で 440KB にもなるが、イントラネットではかなりのスピードが
出せるので、10base-T でもほとんど問題なく表示させることができた。
- 教科・領域
- ねらい
- 生徒・職員全員の自己紹介ページの作成・公開を通して相互理解を深める。
- 内容
- HTML 形式での自己紹介作文の作成。
- 画像 のスキャナでの取り込みと加工。
- 校内ページ
での公開。
- プリントアウトの文化祭での展示 … 「田野畑高校オールキャスト」
- 個人名を加工し (氏名を名前だけのひらがな表記に変更)、
外部のコンテストへ応募。
- 成果・課題
- 生徒の作成したページ
を一つ例示する (リンクは正しく働かない)
- HTML 作成に当たっては、
まともなオーサリングソフトがない
(すみけんたろう) ので、
秀丸 で
地道にタグを入れている。使用するタグは基本的なものだけ
(Hn P UL LI HR 程度) だが、HTML に慣れるのに大きな効果があった。
- 生徒数90名とはいえ、学年が異なればあまり接することのない生徒もいるが、
自作のページを通して相互理解を深めることができた。
- 文化祭ではこのページをカラープリンタで印刷し、額に入れて
創立50周年記念展示としたが、壮観であり、好評を博した。
- 外部のコンテスト ('98ソニーディスク&テープ大賞) では
ホームページ部門で佳作 (全国4位) を受賞した。
- ネットワーク OS を導入して、生徒個人のイントラネットフォルダを設定し、
今後は個人ページを自由に作成・校内に公開できるようにしたい。
- 教科・領域
- ねらい
- ページ検索機能と WWW 検索機能を活用し、情報の検索を行わせる。
- WWW で得た生の英文 (長文、大量) に触れさせる。
- 他の情報を活用した英作文を行わせる。
- 内容
- 映画『タイタニック』鑑賞
- 感想と主人公の女の子 (おばあさん) の過去と現在について
思いつくまま書き出させる (日本語)。
- クラス全員が書いた過去と現在の文をプリントして配り、
各自好きな文を選んで英文にする。
- 映画の主人公の面影をたどるため、
生存者のその後を綴ったサイト
をネットワークで読ませる。
- 生存者のうちの数名の名前をあげたプリントを配布し、サイトの本文から、
主な人物についての情報 (生年月日・出身地・タイタニック乗船時の状況など) を
読み取らせ (ページ内検索)、プリントに書き入れて整理させる。
必要に応じて逐語訳ソフト (訳師如来) を活用した。
- 生存者の中に日本人が一人いる (細野晴臣の祖父) ので、
彼についての情報をさらに WWW 検索 (goo などを利用) し、まとめさせる
- タイタニックの事故以前と以後に分けて、興味を持った人物について
英作文させ、全体の感想を日本語で書かせる。
- 成果・課題
- この授業を計画した時点では、WWW を利用できるコンピュータが
1台しかなかったので、教材の提示に苦労した。
- また、この段階では WWW 検索機能を十分に活用させることができなかった。
- 授業がプリント整理に入った頃 (1月27日)、ネットワーク全台から WWW を
使えるようになったが、それときに生徒の取り組みが劇的に変わった。
- 英作文については、本報告の時点ではまだ完成していないので、
その評価については後日 Web 等で改めて報告したい。
- 英語科では、この他にも WWW を活用した授業を多数行っている。
- 教科・領域
- ねらい
- いわゆるモバイル環境での Web ページの制作・公開を通して「通信」としての
Web ページの可能性を探る。
- 内容
- 成果・課題
- ライブレポートと銘打って以上の取り組みを行ったが、見てほしい相手
(学校に残っている生徒・教員) がインターネットを十分に使える環境になかった
ため (生徒用ネットワークがインターネットにつながったのは 平成11年1月)、
「通信」としての成果が期待したほどではなかった。
- 携帯電話や PHS が使えればもっと気軽に通信可能であるが、
田野畑村がサービス外ということもあって、これらを持っている者が少ない。
- ページの作成は面倒で、Web ページのない学校も多いが、後からではなく、
その場で作ってしまうと精神的に楽である。
- 教科・領域
- ねらい
- WWW を利用して修学旅行先の研修地等の情報を得る。
- 内容
- 修学旅行 (長崎) の自主研修班編成を行い、WWW から研修先情報を得て
見学地を決める。
- 主な参照ページは以下の通り
- 成果・課題
- 官庁等のページには充実した観光情報があり、時間・見学内容・費用等について
十分な計画を立てることができた。
- この時点では WWW を利用できるコンピュータが1台しかなかったので、
主なページは印刷して教室に掲示する方式をとった。
- 本校のページ作成に当たっても、地域情報の構成について参考になった。
- コンピュータの利用で、最も手軽で可能性がある手段と考えられる。
インターネットがもてはやされているが、各種の研究会等でも最も話題に上り、
成果を見ているのが LAN の活用例である。
今後さらに研究すべき分野と思われる。
- 今後 LAN を構成する場合、本校の経験から次の例を推奨する。
- 速度 … 100base-TX。10Base-T で40台は無理があった。
サーバー機がフリーズする。
- ネットワーク OS … Windows NT、UNIX 等。本校の現状は Windows95 であるが、
年度始めのクライアント (生徒用) コンピュータの設定が非常に煩雑。
- プリンタ … 100base-TX プリントサーバに接続して利用。プリンタがなくても
それほど不便は感じない。本校の生徒用ネットワークでは、季節に一度くらいしか
印刷をしない。
- インターネットについて学ぶ前段階としても有効。
- ネットワーク OS を使用すれば、インターネットとほぼ同じ活用が可能。
- HTML ファイルによる校内ページの作成 … 内規・会議資料・報告書等の共有、
生徒・職員の個人ページの作成と校内での公開。
- グループウェアの利用 … イントラネット内でのメール、
メーリングリストの利用。
- 本校で利用しているソフト
- ブレーン Proxy2000 … モデム・TA 等をネットワークで共有するソフト。
次の ProxyMail があれば不要。
- ブレーン ProxyMail … イントラネットメールソフト。
インターネットメール1アカウントを、複数で利用することも可能。
この二つのソフトと同様の機能を持つものとしては、
WinProxy (フリーソフト) があげられる。
- ブラウザ … MSIE4.01sp1 NC4.6、その他、表示確認用に MSIE3 NN2 などを
入れたコンピュータも置いている。
- メール … (思案中)
- 接続形態について
- 現状は ISDN 64kbps のダイアルアップ接続で、最大40台が利用している。
エラーメッセージなしで走るのは20台程度か。しかし全台接続が可能になってからは、
生徒の利用が激増した。1台とは全く状況が違う。
今後 ISDN 128kbps 接続に変更したい。
- ISDN はクリック後10秒で接続を開始できる。近くに対応できるプロバイダがない
こともあるが、専用線接続についてはそれほどこだわらない気持ちである。
- 40台接続が始まったばかりで生徒は興奮しているが、次はメールの利用であろう。
メールアカウントを生徒・職員全員に発行できる状況
(インターネットサーバーの利用) を作りたい。
- しかし、以下の理由から、校内にインターネットサーバーを置くことには
反対である。
- Windows NT では外につながるサーバーとしては信頼性がない。
UNIX については管理にスキルが必要で、教員の片手間では難しい。
担当者の交代ができなくなる。
- プロバイダのレンタルサーバーサービスが今後増え、価格も値下がりすることが
予想される。レンタルサーバーとは、プロバイダのサーバー機貸しサービスであり、
独自ドメイン (http://www.tanohata-h.ed.jp/ 形式) の利用、
メールアカウントの容量内無制限発行ができるようになる。
サーバーの管理等はプロバイダに委託することができ、
個別のメールアカウントを契約するよりはるかに格安に、独自のサーバーを
見かけ上・実際上利用できる。
- 校内にインターネットサーバーをたてれば、電話代だけで上記が可能であるが、
その管理は一筋縄ではいかないだろう。
- 教育委員会等に期待したいこと
- 今年度、県立学校にはインターネットへの接続が予算措置されたが、
次は インターネットサーバーを各学校で立ち上げることとなろう。
JPNIC
(日本ネットワークインフォメーションセンター) の
「ED ドメイン名について (平成10年9月1日)」 も
そのような趨勢に基づくものと考えられる。
今後のインターネット関係予算措置等に当たっては、次のような方式を期待したい。
- 既に行われているが、年次計画で各校に LAN を整備する。
- 今年度同様のインターネットへの接続予算措置を継続する。
ダイアルアップ接続しかできない地域では 1日6時間の電話代を確保する。
本校では1日3時間程度の利用にとどまっているが、ISDN 128kbs 接続を行うと
電話代は 2倍となるので、これを見通して予算措置を行う。
OCN エコノミーなどが利用できる地域では、専用線接続を実施できる金額とする。
- 全教員にメールアカウントを発行する。公立学校の場合、転勤があるので
岩手県ドメイン (pref.iwate.jp) の方がよいだろう。
- 県予算 (県教委による契約) でサーバーレンタルを行い、各校のドメイン (ed.jp)
を使用可能にする。インターネットサーバーの管理はプロバイダに委託し、
学校では利用に専念する。これが実現されると生徒にもメールアカウントを発行でき、
インターネットの主な機能を問題なく利用できるようになる。
生徒用ネットワークの40台すべてから WWW が使えるようになったとき、生徒の
取り組みが劇的に変わった。インターネットは優れて個人的なツールであることを、
そのときに実感した。1台しか使えなかったとき、一斉授業のツールとして WWW を
考えたが、平成11年1月27日からインターネットはわれわれの手を離れ、
ブラウザの前の生徒のものになった。
「個性」という言葉を考えたとき、インターネットはそれを伸ばすのに
極めて大きな可能性を持っているように感じられる。
たとえば、他と同じ、同じような情報の Web ページには価値がない。
他にない情報があってこそ存在する意義がある。そういうことを体験・実感する中で、
自分らしさをどうつくっていくか、半ば自然に生徒は考えないか。
また、それを支援する教育活動をわれわれはどう構築したらよいか。
記念すべき日になった1月27日に、新たな課題を感じている。
本校では、すべての教員がコンピュータを活用し、
半数がメールのアカウントを持ち、公私にわたってインターネットを利用している。
これは、コンピュータを使えなければ校務に差し支える、というネガティブな環境と、
職員室内の LAN で、常時 (自席からも) ネットワークを利用できるというポジティブな
環境によるものである。
インターネットに限らず、新しい技術については、生徒と共に学ぶ・生徒に学ぶ
という教育モデルが可能である。しかしながら、すべてを生徒に頼っては、授業を
デザインできない。教員自らが新しいことに挑戦し続けなければ、
新しい知識・新しい考えは生まれてこないだろう。新しいもの・若い者 (生徒?) に
負けない気概こそが、教員に求められている課題ではないだろうか。
1999年1月27日
岩手県立岩泉高等学校田野畑校 菊地達哉